東京ガス株式会社
ボイスボットは「システム連携」で成果が変わる。AI対応完了率を約20%引き上げた運用の深化
「CRM連携・SIP接続」へのアップデートでより使いやすく人に寄り添うAI化へ
導入サービス
CAT.AI
業種
電気・ガス業
活用対象
ガス開閉栓受付・不払い受付
東京ガスカスタマーサポート株式会社は、お客さまセンター(コールセンター)対応における顧客サービス向上と、引越しの繁忙期を中心に急務であった業務効率化を目的に、AIを活用した自動化システム「CAT.AI (キャット エーアイ)」を2024年2月に本格導入しました。
お客さまセンター受付の約半数を占める、ガス開閉栓受付の自動化で活用されています。 その後、2026年3月にはCRM直接連携やSIP接続などのシステム連携を完了させ、運用の深化を遂げました。
システム連携に伴うエラー処理の削減や完了率向上の効果、今後のさらなる展望などについて、東京ガスカスタマーサポート株式会社 BPO事業本部 BPO事業企画部 センター支援グループ グループマネージャー 田中 直樹氏、沼田 萌子氏、津原 朱里氏にお話を伺いました。
※記事中の肩書や内容はインタビュー当時(2026年5月)のものです。
課題
- 慢性的な人員不足:引越しの繁忙期(1月〜4月中旬)には入電数が通常期の2〜3倍に跳ね上がり、1ヶ月におよぶオペレーター研修や人材確保が大きな負担となっていた。
- 運用エラーのリカバリー負荷:初期導入時はWEBサイトとの「スクレイピング連携」だったため、自社WEBサイトの内容変更に伴うエラーが頻発し、土日を含めだいたい1日に5人工の管理者(SV/LD)をリカバリー処理に割く必要があった。
- 転送時の離脱:既存PBXから「外線転送」でボイスボットへ繋いでいたため、お客様に発信元電話番号を再入力してもらうステップが発生し、そこでの誤認識や離脱が生じていた。
施策
- 音声とWebのハイブリッド対応:正確な住所が不可欠なガスの開閉栓受付において、音声で用件をヒアリングした後にSMSでURLを送り、正確な住所情報をWeb画面でお客様に入力してもらう仕組み(CAT.AI)を導入。
- CRMとのAPI連携:ボイスボットとCRMを直接APIで連動させ、スクレイピングに頼らない強固なデータ連携へとアップデート。
- SIP接続へのアップデート:外線転送からSIP接続へ切り替えることで、お客様の発信元電話番号情報をCAT.AIへシームレスに連携・引き継ぎさせ、電話番号の再入力ステップを削減。
効果
- エラーリカバリー処理が「0件」に:CRM連携による接続の安定化により、これまで毎日5人工を要していた現場のエラー処理工数がほぼゼロになった。
- AI対応完了率が約20%向上:SIP接続による電話番号入力の廃止などでボイスボット単体の完了率が5%改善したことに加え、トータルでの手続き完了率は約20%の向上を達成。
- 対応範囲の拡大:スクレイピング運用の限界という課題解決を見据え、システム連携へのアップデートと同時に、料金未払いに伴う「ガスの供給再開手続き」へも適用を拡大。
ガス開閉栓受付の自動化へ。繁忙期の課題を「音声とWebのハイブリッド対応」で解決

本日はお時間をいただきありがとうございます。
東京ガスカスタマーサポート様には、弊社のAIボイスボット「CAT.AI」をご導入いただき、活用の幅を広げていただいております。
2024年の導入初期には、音声とWebを組み合わせたハイブリッド対応によって、難度の高いガス開閉栓受付を自動化し、引越し繁忙期において極めて高いAI対応完了率を達成した取り組みを伺いました。
あれから約2年が経ち、今回はその後の実際の運用で見えてきたリアルな課題や、システム連携によってそれをどう乗り越えたかという「運用の深化」について、詳しくお伺いできればと思います。
※2024年公開の第一弾の事例記事はこちら:ボイスボットの課題を乗り越え、ガス開閉栓電話受付の自動化を実現
まず、改めて自動化の導入へと至った、当時のコールセンターの課題から教えていただけますでしょうか。
田中氏:弊社は、ガスや電気、各種サービスに関わるお客様の窓口を担っています。
その中で大きな課題となっていたのが、慢性的な人員不足と、季節ごとの急激な「繁閑差」でした。 特に引っ越しシーズンである1月から4月中旬にかけては、夏場などの通常期に比べて入電数が2〜3倍に跳ね上がります。
繁忙期に合わせたオペレーターの採用や教育には、かなりのリソースが必要になりますよね。着台までにどのくらいの期間がかかるのですか。
沼田氏:ガスの開閉栓受付業務は、研修期間として約1ヶ月を要します。1月のピークに向けて11月から採用をスタートするのですが、短い期間で複数の研修ラインを走らせる必要があり、多くのコストと労力がかかっていました。採用しても途中で離職してしまうケースもあり、常に人を補填し続けなければならない状況が続いていました。
こうした状況から、デジタル技術を取り入れ、お客様をお待たせすることなく均一な受付ができる仕組みを作ろうと、自動化の検討が始まりました。
そこで、正確な住所情報を確実に取得できる「音声とWebのハイブリッド対応」を備えた弊社の「CAT.AI」をお選びいただいたのですね。
沼田氏:はい。ガスの開閉栓受付では、住所や氏名などの「極めて正確な情報」が不可欠です。あいまいな住所のまま受け付けてしまうと、当日の作業員が現地に赴くことができず、開栓作業が行えません。
その点、「CAT.AI」はSMSでURLを送信し、お客様自身に正確な住所をWeb画面で入力していただくことが可能でした。この仕組みであれば、住所の誤認識を防ぎ、正確な情報を確実に取得できると確信したことが最大の決め手です。
CRM連携とSIP接続による「運用の深化」で、毎日5人工のエラー処理が「0件」に。AI対応完了率もトータル約20%向上

2024年2月の導入当初、自動化の仕組みはできたものの、システムの裏側ではいくつか運用の難しさもあったとお聞きしています。具体的にはどのような状況だったのでしょうか。
沼田氏:正直にお話しすると、当時の社内評価は「20点」からのスタートでした(笑)。
もちろん、これはCAT.AI自体の機能や品質だけに問題があったわけではありません。ボイスボットの導入時期と、弊社側の新システム(CRM)の刷新時期が重なってしまったことで、当時はシステム同士を直接データ連携させることができないという「システム移行期ならではの制約」が原因でした。
そのため、画面上の情報をシステムが自動で読み込む「Webスクレイピング」という暫定的な方法で連携せざるを得ず、これが運用上の大きなハードルとなっていました。
また、既存のPBX(構内交換機)からボイスボットへ繋ぐ際も、当初は「外線転送」という接続方法を取らざるを得なかったため、いくつかの課題が生じていました。
スクレイピング連携や外線転送による暫定運用では、現場にどのような影響が出ていたのですか。
沼田氏:スクレイピング起因のエラーが頻発し、そのリカバリー処理に多くの人手と時間を取られてしまっていました。弊社側のWeb仕様が少しでも変わるとスクレイピングの裏側のロジックが崩れてしまうため、その都度CAT.AI社に修正を依頼し、テスト、リリースを行うという工程が発生し、改修にかなりの時間を費やしていました。
また、外線転送の時はお客様の発信元電話番号を引き継げなかったため、お客様自身にボイスボット上で再度電話番号を入力していただくステップがありました。この入力がうまく認識されずにお客様が途中で切断してしまう、というケースも発生していました。
そこで、2026年3月に「CRMとの直接連携(API連携)」と「SIP接続」へのアップデートへと踏み切られたのですね。
田中氏:はい。このアップデートが大きな転換点となりました。
まず、CRMと直接APIでデータ連携(CRM連携)できるようになったことで、弊社のWeb仕様が多少変わってもボイスボット側の修正が不要になりました。改修やテストの手間が劇的に削減されただけでなく、土日も含めて1日に大体5人工ほどのSV(スーパーバイザー)を割いていたエラー処理対応が、「0件」になりました。
これによる現場の負担軽減と業務効率化は非常に大きなものでした。 さらに、SIP接続に変えたことで、お客様の発信元番号をシステム側でスムーズに自動認識できるようになり、電話番号入力時の離脱を防ぐことができるようになりました。
運用面が大きく整理されたのですね。このアップデートを経て、「AI対応完了率」としてはどのような変化がありましたか。
津原氏:API連携とSIP接続によるボトルネックの解消だけで、ボイスボット単体の完了率が5%改善しました。弊社の規模感からすると、5%の向上でも数千件レベルのインパクトがあります。 さらに、途中で切断されてしまったものの、裏側で手続き自体は正常に完了しているケースなども合わせると、全体で約20%へ完了率が向上しました。

成果がしっかりと数字に表れたのですね。このアップデートを経て、導入当初20点でしたが、現在の社内評価はいかがでしょうか。
沼田氏:今は間違いなく「85点」です。
実際にボイスボットを使って引っ越し手続きをした私の友人からも、「あっという間に終わってすごく手続きが早かった!」という声を貰いました。ストレスなくスムーズに使える仕組みになったと実感しています。
不払い再開手続きの音声完結など、対応範囲をさらに拡大。「人に寄り添うデジタル」の実現に向け、チャネルの一元化を目指す。
残りの「15点」は今後のさらなる進化への期待ですね。直近の2026年3月からは、ガスの開閉栓だけでなく「ガスの供給再開手続き」にもCAT.AIの適用範囲を拡張いただきました。
津原氏:はい。料金未払いによってガスの供給が止まってしまったお客様が、お支払い後に再開手続きを行う窓口の自動化です。 ここでは、開閉栓のようなWeb連携を挟まずに「音声のみ」で受付を完結させる仕組みに挑戦しました。
「音声だけでどこまで自動受付ができるか」という点において、対応要件をさらに拡大していけるという自信に繋がりました。
今後、コールセンターにおけるAI化やデジタル活用を進めていく中で、全体としてどのような姿を目指していきたいとお考えですか。

田中氏:現在、ボイスボット、チャットボット、Web FAQなどがそれぞれ独立して運用されているため、将来的にはこれらを一元化したいと考えています。管理の効率化はもちろん、お客様にとってもより分かりやすく、迷わない導線を提供したいです。 AIで回答することが当たり前になる時代がすぐそこまで来ていると感じます。
しかし、インフラを支える企業として、AIで機械的に対応できる部分と、どうしても人の手で寄り添わなければならない領域は必ず存在します。 今後も「AIと人が上手く共存する」形を模索しながら、会社の方針である『人に寄り添うデジタル』の実現に向けて、適用領域をさらに広げていきたいですね。